記録更新なるか2020/06/03 12:42

コロナ禍による移動自粛によって、状況が二転三転した将棋界。
その中で、急遽行われることになった昨日の棋聖戦挑戦者決定戦の準決勝で、藤井聡太七段は前名人を見事に破って、記録更新まであと1勝としました。
日程は過酷で、明日、その決勝戦が行われます。

まず第一に、「記録更新」がかかっているのは、「最年少タイトル挑戦者」になることであって、タイトル獲得ではありません。(この記録更新にはまたあと1年の猶予があります。)
次に、御本人はこのような記録達成には恐らく関心がありません。目指しているのは「強くなること」だけであって、結果はおのずとついてくる、という発想です。

その上で、何がポイントかというと、藤井七段はいつもながら、メキメキと棋力を上げています。素人にわかりやすい1つの目安で云うと、いわゆるレーティングで言えば、
第1位:藤井聡太七段
第2位:渡辺明 三冠
第3位:永瀬拓矢 二冠
第4位:豊島将之 竜王・名人
第5位:羽生善治九段 となっています。

勿論、第2位から第4位はであっても実際には豊島竜王・名人、渡辺三冠 が2トップなのはどなたも異論がないでしょう。
また、公式戦では藤井七段は豊島竜王・名人には4戦0勝です。(非公式戦の新人王記念対決では勝利。)

とはいえ、1年前には圧倒的に負け越していた、今最も充実している新A 級の菅井8段、斎藤8段にはそれぞれ直近で4連勝と3連勝です。また、負けている豊島竜王・名人(この2つのタイトルは特別で、格が最も高いのが竜王、次が名人です)相手でも、回を追うごとに接戦になっています。
今回の相手、佐藤天彦9段は前名人でしかも3期連続というトップ棋士です。その佐藤前名人相手にある意味で圧勝でした。

次の相手、永瀬2冠は「負けない将棋」がモットーで、そのストイックさから「軍曹」(最近は中尉に昇進したとかいう噂も?!)と呼ばれている強豪です。
番勝負ならいざ知らず、1度の対戦で雌雄を決するのですから大変ですが、6:4位で勝てるのでは、と思います。

また、この棋戦以外でも、挑戦者になれそうな位置まで勝ち上がっている棋戦が複数あります。例えば、王位戦ではあと2勝で挑戦者になります。
ここでも相手は永瀬2冠だったりしますが、実はこのお二人は仲が良いのです。
藤井七段が定期的に練習対局をしている唯一のお相手が、この永瀬2冠です。
10歳年上で、とても優しい先輩です。また、藤井七段の才能を最も高く評価している棋士ともいえるでしょう。
この二人、公式戦での対決が初めてなのです。
これからもずっと競い合っていくお二人と言えるでしょう。

その意味でも明日は本当に楽しみです。千日手指し直しもあるかも?!
万一、明日がダメでもすぐに次があります。藤井七段には、最年少タイトル『獲得』の機会があり、更にひょっとすると複数冠の奪取さえ現実味を帯びてきました。
さあ、藤井劇場の本格的な幕開けです。
今年は本当に楽しみが増えました。