一本の道 ― 2020/06/29 10:20
藤井七段は、昨日の対局に勝ち、とうとうタイトル奪取まであと1勝に迫りました。
コロナ自粛期間を経て、久々の対局再開後の超過密スケジュールの中、ここまでのトップ棋士達との対局で凄まじい進化の証を存分に示しています。
私が20日前に感じた強さとは桁違いの力を、既につけていました。
永瀬二冠との対局も2ー0で、謙虚な永瀬二冠とは言え、「追いつけるように頑張りたい」と言わしめ、昨日の渡辺三冠戦では、「どこで悪くなったか分からなかった」という程の圧勝で、5番勝負で2ー0です。
この期間、途中で大橋6段に負けていますが、彼も波はあるものの大変強い若手でもあります。ただ、印象としては、連戦の疲労もあり、藤井七段がある意味で自滅した感のある内容でした。
将棋では、特にタイトル戦では先手が圧倒的に有利です。
昨日は渡辺三冠が先手でしたから、藤井七段が負けても不思議はありませんでしたし、私も、流石にフルセットにはなるだろうと思っていたので、昨日の後手番での勝利はまさに衝撃的でした。
渡辺三冠は、以前、タイトル戦で角番に追い込まれてからの連勝で逆転勝利の経験があります。が、その渡辺三冠をもつてしても、今の藤井七段に残り3局での逆転は、まず無いでしょう。それだけの内容を伴った勝利だったからです。また、そもそも藤井七段は、今まで連敗は殆どなく、3連敗もありません。
昨日のインタビューでも、あと一勝ですねと言われても、(五番勝負なので)「5局で一つの勝負と思っている」との答えでした。
全く気の緩みがありません。それに、危害を加えるというとんでもない予告にも動じる気配を感じさせない堂々とした姿を見せてくれました。
もうすでに王者の風格すら感じられます。元々、将棋の内容も、棋士の皆さんからも「人生何周目?」と言われるほど落ち着いた指し回しで、「背中のチャックを開けると大山名人(公式タイトル80期の大山康晴十五世名人)が出てくるんじゃないの」と言うくらいの強くて渋い手を指すのです。
また、単に勝つのではなく、その指し回しにプロをも唸らせる妙手、奇手が多くて、この若さですでに毎年の「藤井聡太全局集」や「藤井聡太の奇手」と言う本が既に出版されていることからもよく分かります。
よく間違えられますが、藤井七段はAIで強くなったのではありません。
AIを使うようになったのはプロ入り直前位で、しかも、AIでは決して指せない手を沢山指しています。上手く使いこなしていますが、全て自分の頭で考えているからこそ、誰にも真似のできない指し手が生まれるのです。
もう彼が藤井「7段」と段位で呼ばれる日は2〜30年後です。これからはずっとタイトルホルダーとして歩み続けることでしょう。
制度上、最短でも名人位を取れるのは2,3年後です。
その時、果たして藤井聡太さんは何冠となっているでしょうか。
今、彼の前には、他の誰も歩けない、真っ直ぐな一本の道が延びています。
どうか健康に気をつけて、どこまでもその道を進んでほしいものです。
できることなら、私も長生きして、それを見届けたいのですが、それは難しいかもしれません。
今まさに真の天才、この上なく真摯で謙虚で、プロもアマも、将棋を指さない人にも愛される棋士の成長する姿を見ることができるのは、なんと幸せなことでしょう。
私の人生にこの上ない楽しみを与えてくれて、本当に有難う!
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