藤井八冠2024/03/29 11:15

  怒涛の記録ラッシュで八冠達成から少し落ち着いてきたこの頃。
昨年の年賀状に『藤井竜王名人の誕生を心待ちにしている』と書いたのですが、何と1年後には竜王名人を通り越して、全冠制覇の史上初の八冠になっていました。
 将棋を少しでも知っている人でさえ感覚が麻痺してきている状態ですが、とにかくトンデモナイ偉業なのです。一番分かり易いのは、空前絶後と言われた羽生現9段の、21歳時点(藤井竜王名人の年齢)と比較すれば明白です。
 苦しい将棋を土壇場でひっくり返したことも何度かあり、最後はやはり将棋の神様がいて、彼に8冠を取らせようと思ったとさえ感じられる劇的な幕切れでした。
 デビュー以来ずっと勝率8割以上を維持している棋士はいません。また、タイトル戦で8割と言う勝率を誇る棋士もいませんでした。番勝負ですから、6割で十分タイトルを維持できるので、タイトルを奪取する人もしばらく現れないでしょう。

 1強はつまらない、という人もいますが、それは違います。藤井竜王名人の将棋は本当に華があります。いろいろな勝ち方がある場合、最短かつ綺麗な詰め上がりで勝ち切るのもその一例です。終盤でAIを見ながら「答え合わせ」をできる初心者でも、その間違えない、時にAIを凌駕する詰め手順は本当に芸術的で感動的です。
 負けが確定していそうな場面でも、最後まで粘って、ひっくり返すこともしばしば。簡単には負けません。負けを悟った時に本当に苦しそうに悔しそうにしている姿も人間的でいいのです。
 今は8冠を取って少し落ち着いたことで、中断していた歯列矯正も再開し、コンディションは少し悪いのではと思いますが、まだまだ進化の途中、はっきりと強くなってきています。どこまで突き抜けるのか、本当に楽しみです。

 何より性格が良く、誰にも好かれ、ご家族も裏からそっと支えていらっしゃって、嫌みな質問にも言葉を選んで誠実に答える姿は21歳には見えません。
棋士の中にはあからさまに不快さを表す言動を取ってしまう人もいますし、チョット常識に欠ける人も残念ながらいますが、藤井竜王名人にはそういうことはありません。勿論、プライベートでは若者らしい物言いもするでしょう(ABEMAの将棋番組の控室映像でそれがちらっと覗けたりするのです)が、それも含めて人間的魅力にあふれた人物なのです。
 持ち時間の短いタイトルで戦では対局で負けることもあると思いますが、番勝負としては負けないでしょうし、ファンというものは、たとえそんなことがあっても勿論ずっと応援し続けるものですから。
 とはいえ、当分そんなことは起きないでしょうし、スーツより着物姿の方が板についてきたこの21歳の努力を怠らない大天才にまだまだ魅了されています。